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2011年 07月 13日
バングラデシュで私が派遣された先の職場には同僚が3人いて、皆男性だった。 バングラデシュ人男性はたいてい、「外国人の女性」に「性に開放的」という先入観を持っている。職場の同僚たちにも「ひょっとしてこの人たちの頭の中はそういう妄想でぱんぱんに膨らんでるんじゃないか」とこちらがぎょっとするような質問をちょくちょくされたものだった。別に下ネタを言ってこちらの反応を見るというような下心があるわけではない。 「いや、だからあなたのことはおいといて」 私は早々に女枠から外されていた。彼らの質問は、純粋にその事柄について知りたいという好奇心からのものだった。彼らはその意味で真剣そのもので、だから余計に始末におえない。 恋愛に関して全く自由でないバングラデシュでも、女性に比べればまだ男性の方が性的な自由はある。しかし、妄想というのものは自由を求めて際限がないらしい。 ある日、同僚の一人がちょっと辺りをはばかりながら、 「実はその手の写真を集めたCDがあって、東洋人の女性の写真がいっぱいあるのだけど、僕には中国人と韓国人と日本人の区別がつかない。どれがどれだか教えてもらえないだろうか」 と言ってきた。私は軽い気持ちで承諾した。しかし、「これは中国人だと思う。これは韓国人で、これは……」とやっているうちに、どぎつい写真があふれるように現れて、私はだんだんと気分が悪くなってきた。どちらかというと、写真そのものよりも、職場である職業訓練校の教室で男性と二人、そういう写真を真剣に見詰めているという状況の倒錯っぷりに中ったのかもしれない。 「ご、ごめん。これ以上は無理。気分が悪くなってきた……」 と告げると、彼は本当に申し訳なさそうな顔をして、 「ごめんなさい。あなたなら大丈夫と勝手に思ってしまって……。あなたの気分を害するとは思ってなかったんです」 と謝った。 後で、私を派遣した機関の現地事務所のスタッフ(日本人)にこの話をしたら、 「お前、それはセクハラだぞ!」 と危うく大事になりそうなほど驚いた。私は笑い話のつもりでそれを持ち出したのだ。私にとって、その同僚は単なる気のいい仲間由紀恵好きにすぎなかった。現地スタッフは呆れた顔で私を見た。 この同僚は当時28、9歳だった。 バングラデシュではそろそろ結婚を焦り始める頃で、彼にも見合いの話が持ち上がった。 「あなたに見合いの相手に会って欲しいんです。あなたは人を見る目があるから、彼女に会って感想を聞かせて欲しい」 と彼は言った。 見合い相手は美人だった。仲間由紀恵さんには悪いが、ひょっとしたら彼女より綺麗かもしれない。いわゆるインド美人、南方系の美人である。 率直にいうと、私は彼女からあまりいい感じを受けなかった。しかし、そんなことを同僚に言うわけにもいかず、ただ、 「わあ、物凄い美人だね。どこでこんな幸運を掴んだの?」 とだけ言った。(彼はバングラデシュでは少数派であるヒンドゥー教徒だったから、本当に得がたい幸運ではあったのだろう。) 彼は照れくさそうにしていたが、私の感想に満足していたかどうかわからない。 今にして思えば、私が彼女にいい印象を持たなかったのは、彼女と結婚することで彼が不幸になると感じたからではない。彼女と結婚することで彼が変わってしまうと(はっきりそうと意識はしなくてもどこかで)感じていたからだ。 気のいい、それでいて正義感を忘れない彼に私は助けられたことがあった。しかし、そのことで彼の立場が危うくなった時、私には彼を助けることができなかった。助けたのは彼の友人たちだ。彼らは彼の美点を愛していた。 私は彼に恩義があるがそれについに報いることができなかった。彼のことに限らない。思えば、バングラデシュで暮らした私の2年間はそういうことの積み重ねだった。私は今でも、バングラデシュに帰りたいという強い気持ちと、自分の恥に心底震えてためらう気持ちの両方を持っている。それは裏表のようにぴったりとくっついている。 彼女は彼の美点を変えてしまうだろう。結婚して変わり、子供ができてまた変わる。 彼の美点ゆえに私は助けられ、私はそのことに感謝していた。そして、その感謝のために私は彼がその美点を失うことを好まなかった。
by liyehuku
| 2011-07-13 10:37
| Bangladesh
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